伊田信光 幸福実現党 研修局長(兼)シニア局長 オフィシャルブログ

【「命を染める」挑戦-久保田一竹(下)】

Home / ときめきシニア / 【「命を染める」挑戦-久保田一竹(下)】

【「命を染める」挑戦-久保田一竹(下)】

6321定の5年の辻が花研究は忽ち過ぎます。

手描き友禅のお客さんも、一度断ると後は続かず、収入の道は途絶え、蓄えは底をつき、売り食い生活になります。気がつけば、家も土地も全て売り尽くし、食べる物のない極貧生活になっていました。

yjimage一番辛いのは妻子の苦しみでした。贅沢三昧に育った奥様も赤貧の中、たった一枚の着物で夏も冬も過ごしました。風呂場の屋根は吹き飛ばされ、雨が降れば傘をさし、天気が良ければ月を観ながら湯につかったと言います。

その苦しみの中で、「昭和の染色は昭和の中にある」という悟りに到達します。辻が花の美しさに近づこうとしても、超えられない壁、それは、幾世紀もの時代を経た、時間が醸し出した美しさでした。それは染められないものでした。

yjimage「そもそも、昔作られた通りに辻が花を制作したところで、何の意味があるだろうか。染色と言うものは、その時代の
文化を担った、その時代最高の技術をもってするものではなかろうか。


ただ辻が花を再現するだけのことなら、それは単なる真似事に過ぎないではないか。」…そして、一竹氏は、「昭和の染め物を作ってみよう、あと戻りするのではなく、辻が花の伝統をむしろ現代に引き寄せるべきだ」と覚悟を固めたのでした。これから、染色に対する拘りがなくなり、徹底的な化学染料の研究に入ります。

hanawomatou_6_00そして、誰も作った事のない染料の技術を開発します。これが「一竹辻が花」の基になります。

研究に没頭してから、ほぼ20年が過ぎたある日、ようやく一つの自信作が出来上がります。


…「私はその作品を頭上に掲げて、『こんなものができた。こんなものができたんだ。』と家中を駆けずり回っていた。
イメージ 6妻は私の狂気する姿を眺めながら泣いていた。繰り返し染めること30数度。遂にイメージ通りの染色を実現する事ができた私は、まさに天にも昇る思いであった。」…

 

何のつてもない一竹氏は、古代衣装研究の権威、とりわけ辻が花研究においては、第一人者、碩学と言われる山辺知行氏を尋ねて、自分の作品を見せます。

息苦しいまでの長い沈1101827184黙の後、「久保田さん。展覧会をなさるなら、推薦文を書いて上げましょう」という言葉を貰います。

この時、一竹氏はお礼の言葉も言えず、ただただ感涙に咽ぶばかりでした。

…「この時、もし山野辺先生が作品を認めてくださらなかったら、私はおそらく死んでいたかもしれない。」

…辻が花に出会って40年。すでに60歳を目前にした時でした。


1yjimage952年3月、念願の個展を銀座のミキモトホールで行います。会場は初日から埋め尽くされ、作品はたちまち売り切れ、山野辺氏の推薦文はもとより、日経新聞の文化欄に取り上げられ、信じられない大成功を収めます。

「天才突如現る」と最大級の賛辞が寄せられ、若い弟子入り志願者が何十人も押し寄せました。

その後も血の出るような努力を重ねて、53年に第二回の個展も大成功させるのですが、その無理が祟り最終日に倒れます。

危機一髪で死を免れ、入院生活20日の中で天啓が齎されます。

yjimage…「図案化されたものではなく、自然の美をテーマにし、作為も技巧もない、ただそれだけで美事な調和を保っている自然の美しさを表現する」…ここにようやくシベリアの夕日を白生地の上に染められるようになったのです。

yjimageその後は、米国のロサンジェルスで展覧会を開く事を皮切りに、海外に雄飛します。パリ、ニューヨーク、ダラス、ベルギー、どこでも、大変な騒ぎになって大成功を博します。

 

1
982年の「一竹辻が花 ザ・ショー」を皮切りに、着物革命にも取り組みます。「着物をもっと自由に着れるようにならなければ、日本の着物は滅びてしまう、着物革命の断行こそ、着物が生き続けられる唯一の道だ」という信念からでした。

yjimage1984年の「舞衣夢」では、一竹辻が花とその自由な着方で、色と光と音が折りなす夢幻の無言劇を演出しました。

さらに、一竹氏はそれぞれの人が持っている才能を伸ばすと共に、人間として最も大切な心を考える場にしたいという念いで、趣味と実益を兼ねた手描き友禅教室を開設します。


2776a_0000209449一日に2~3時間の睡眠で、作品制作と着物革命、手描き友禅教室に取り組み続け、命を染める挑戦の最中、2003年85歳で帰天
します。

 

河口湖畔の「久保田一竹美術館」にぜひ平日行ってみて下さい。

美術館の佇まいが一竹氏そのものです。未完成の「光響」の大作には神を感じます。

a0217730_1432340ーマは「自然」から「光」に移りました。「創作するからには最高のものを…」偉大なる挑戦。こんな独創的で偉大な芸術家が日本に出た事を誇りに思います。(完)


ページのトップへ